昔、ふらっと入ったカフェで見かけた南部鉄器が、ずっと記憶に残っています。
黒くて重たい、というイメージしかなかった南部鉄器が、そのカフェではやさしい色合いで、空間にすっとなじんでいました。
テーブルの上にあったのは、ころんとしたフォルムの急須。
落ち着いたブルーか、グリーンだったか…。
どこのブランドだったのかは思い出せないけれど、「南部鉄器って、こんなに上品で可愛いんだ」と思った感覚だけは、今もはっきり覚えています。
そのときは特に調べることもなく、日常に戻ってしまったのですが、最近たまたまネットで南部鉄器を目にして、あのカフェでの記憶がふっとよみがえりました。
今の暮らしに、南部鉄器がしっくりくる理由
南部鉄器は、岩手県で受け継がれてきた伝統工芸です。
鉄瓶や急須は、保温性が高く、お茶の時間をゆったりとしたものにしてくれます。
でも最近は、「実用的だから」だけでなく、「空間になじむから」「見ていて気持ちがいいから」という理由で選ばれることも増えているように感じます。
カフェで南部鉄器を見かける機会が増えたのも、そんな変化のひとつなのかもしれません。
IWACHU(岩鋳)|色で選べる、南部鉄器の入り口
カラフルな南部鉄器と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが IWACHU(岩鋳)です。
マットでやさしい色合いの急須は、和の道具でありながら、北欧インテリアやカフェ空間にも自然に溶け込みます。
ブルーやグリーン、ホワイトなど、「色で選べる南部鉄器」という存在は、南部鉄器に少しハードルを感じていた人にとって、とてもやさしい入り口だと思います。

OIGEN(及源鋳造)|大人のための、静かな存在感
OIGEN(及源鋳造)は、IWACHUよりも少し落ち着いた印象の南部鉄器ブランドです。
深みのあるブラックやグレー、スモーキーな色合いは、
キッチンや食卓にそっと寄り添うような存在感。
「長く使う道具を、丁寧に選びたい」
そんな気持ちに寄り添ってくれる南部鉄器だと感じます。

OITOMI(及富)|かたちの美しさが際立つ南部鉄器
OITOMI(及富)は、光沢のある色味やフォルムの美しさが印象的なブランドです。
ころんとした鉄瓶や、バランスの取れた持ち手。
派手さはないけれど、使うたびに愛着が増していくような佇まいがあります。
実は近年、大谷翔平選手が自身のSNSで南部鉄器を紹介したことをきっかけに、OITOMIのドジャースカラー(青色)の鉄瓶「みやび」が大きな注目を集め、1年待ちになるほどの人気となったそうです。
南部鉄器は、流行ではなく「暮らしの一部」
南部鉄器は、決して派手なブームを起こす道具ではありません。
けれど、カフェに置かれ、家庭の食卓に戻り、また静かに使われ続けていく。
そんな循環の中で、少しずつ「今の暮らし」に合うかたちへと変化してきたのだと思います。
もし、あのカフェで出会った南部鉄器が、今すぐ手に入らなくても。
その記憶が、今の選び方をやさしく変えてくれることもあります。
ブランド名を覚えていなくても、色や空気感だけが残っている道具ってありますよね。
たぶんそれは、その道具が「ちゃんと好きだった」証拠。
南部鉄器も、静かに、でも確かに、暮らしの中に居場所をつくってきた道具なのだと思います。




